臺北で最もクールな街:中山の表と裡

▲繁華街の1つである中山は、雑志『タイムアウト』で「世界で最もクールな40の街」に選ばれました。(寫真・Mike Sung)

Jonathan Kaplan

編集

下山敬之

寫真

Mike Sung、Jeremy Kuahn、23喜劇倶楽部、臺VLT、Fifi Lee、臺北市観光伝播局

臺北のMRTが運行を終了する深夜、南京東路にはバイクやタクシーが行き交います。目的地は中山の小さな通りにある深夜営業のビストロや控えめな居酒屋、賑やかなシーシャバー、灑落た隠れ家的なバーなどです。

林森公園の向いにある24時間営業の飲茶レストランに通う常連客は、窓際の席に座り、窓の外の道路や店內にいるミュージシャンやバーの店員を眺めます。これは毎晩繰り返されている光景であり、2023年11月にイギリスの著名な雑志『タイムアウト』が中山を「世界で最もクールな40の街」に選んだ理由の一つでもあります。臺灣の他の地域が選出されていないこともあり、この栄譽はより特別なものになっています。ぜひ実際に足を運んで中山の魅力を體験してみて下さい。

中山の起源

19世紀後半、臺北が小さな貿易の町から本格的な都市へと発展するにつれ、中山は都市開発の中心となり、急速に工場や學校、住宅が増えました。日本時代に入ると整備が始まり、移動しやすいように格子狀に道路が敷設されました。支配階級のエリートたちはこの地域の豪華な住宅に住み、その周囲には地元の商人や職人、専門職の家族の家や商店が立ち並びました。

▲中山には壁にペイントを施した獨特なカフェがたくさんあります。(寫真・臺北市観光伝播局)

日本が今日の中山區に與えた影響は大きく、長安西路より北側には居酒屋やラーメン屋が軒を連ね、東京や大阪の街並みをそのまま持ってきたかのような印象を受けます。実際にこのエリアを歩くと日本語が頻繁に聞こえ、今でも日本人の観光客やビジネスマンに人気であることが伺えます。とはいえ、ここは日本ではなく、歴史という名のるつぼで鍛え上げられ、この地で生活をする人たちによって絕えず形を変え続けてきた臺灣獨自の街です。実際、「中山」という地名も中華民國の建國の父として敬愛されている孫文の通稱「孫中山」から名付けられています。

アクセス

MRT中山駅を出発して南西商圏へ向かうと、臺北のスタイリッシュでエキゾチックな買い物環境が體験できます。南西商圏の隣には赤峰商圏があり、厳密には中山區ではなく大同區に位置しますが、路地が復雑に交差していることから中山の延長とみなされています。そこからさらに西へ向かうと、臺北のもうひとつの人気観光スポットである大稲埕商圏があり、臺灣の歴史と文化発展の様子を見ることができます。

カフェやレストラン、ギャラリー、史蹟、クリエイティブマーケットなどが揃っている中山は、ショッピングを楽しむだけでなく、おしゃれなスポットで寫真を撮りたい若い観光客にも人気です。どこを歩いても素敵なお店やスポットが見つかります。

▲心中山線形公園は數多くのインスタレーションアートが設置されています。(寫真・Mike Sung)

日本的なバックグラウンド、近代的な設備、シックなスタイル、溫かい雰囲気など、ユニークな體験を求める旅行客にとって中山は最適な場所です。自由に散策をしてもお気に入りのスポットやお店は見つかりますが、ここで紹介する場所も參考にしてみてください。

日中の中山

中山は晝間から活気が溢れていますが、文學や芸術に関連するスポットも數多くありますし、史蹟やかわいいショップなどを回るのもオススメです。

心中山線形公園と中山地下書店街

MRT雙連駅から中山駅へと続く道沿いにある心中山線形公園は美しい都市型デザインの憩いの場です。自然の綠と建物が見事に調和し、道中の街並みは絕えず変化していくので人間観察や散策に最適です。季節ごとに変わるアートが設置されるこの公園には、家族連れやおしゃれな地元の若者、友人同士のグループなど様々な人が新鮮さを求めて集まります。週末には手工芸品やアクセサリーなどが並ぶ魅力的な屋外マーケットが開かれます。

▲心中山線形公園は散歩に最適な場所で、美しくデザインされた都會の憩いの場です。(寫真・Mike Sung)

地下鉄駅とつながっている中山地下書店街では、本や文具、雑貨などが見つかります。快適な室溫の中でゆっくり小說などを探して見ましょう。地上には公園と交差する通りや路地があり、かわいいカフェやパン屋、セレクトショップなどが並んでいます。

▲中山地下書店街は地元の人たちの日常にアートをもたらします。(寫真・Mike Sung)

▲かつて日本の役人の宿舎だった蔡瑞月舞踊研究社の木造建築は、今では蔡氏のダンスの記錄やビデオを誇らしげに展示しています。(寫真・Mike Sung)

蔡瑞月舞踊研究社

臺灣はスポーツが盛んで、特にダンスは人気があります。週末になると街のあちこちでステップを練習する若者のグループを見かけます。臺灣のモダンダンスの母と稱される蔡瑞月はダンスアートのパイオニアであり、舞踊研究社では今日も彼女の仕事を引き継ぎ、若い才能に重要な教育の基盤を提供しています。蔡瑞月舞踊研究社の木造の建物は、かつて日本の役人の宿舎でしたが、現在は毎周火曜から日曜の午前10時から午後5時までゲスト向けに開放しています。

▲かつて日本の役人の宿舎だった蔡瑞月舞踊研究社の木造建築は、今では蔡氏のダンスの記錄やビデオを誇らしげに展示しています。(下・Jeremy Kuahn)

登波咖啡

レトロでおしゃれな內裝と、完璧なコーヒーを目指す情熱で知られているのが登波咖啡です。MRT雙連駅のすぐ南、心中山線形公園の隣に位置する、臺北でもトップクラスのカフェの一つです。シナモンロールを片手に、中山の美味しくおしゃれなスタイルのコーヒーを堪能しましょう。

▲登波咖啡はレトロとモダンを融合させたスタイルのお店です。(寫真・Mike Sung)

光點臺北

光點臺北は、かつてアメリカ大使館として使用されていた非常にユニークな場所です。現在はエレガントな雰囲気がある親しみやすい映畫館となっており、アジアの名作が放映されています。上映スケジュールやチケット情報については公式サイトをご確認ください。

▲映畫館となっている光點臺北は、かつてアメリカ大使館の官邸だった2階建ての白い洋館の中にあります。(寫真・臺北市観光伝播局)

東橋商店

このベーカリーは臺灣ならではのスタイルとフレーバーが特徴で、地元でも非常に人気があります。中でもオススメは本物と見間違えそうな見た目のサツマイモを模したパン。中には本物のサツマイモがぎっしりと詰まっていて、インスタ上でも人気があります。ぜひ他の種類のパンと合わせて試してみて下さい。

▲東橋商店では、できたてのじゃがいもパンを提供し、多くのお客さんを惹きつけています。(寫真・Jeremy Kuahn)

臺北當代芸術館

MRT中山駅から南へ歩いてすぐのところにある臺北當代芸術館は、現代アーティストの作品の展示だけでなく、巧みで示唆に富んだ挑発的な展示も行っています。この建物と周辺の景色は大きく異なり、赤レンガやアーチ構造、翼棟(ウイング)など日本時代に立てられた小學校であることを示す特徴が際立っています。一歩、建物の中に足を踏み入れると優秀なアーティストたちのクリエイティビティあふれるビジョンに浸ることができます。開館時間は火曜から日曜の午前10時〜午後6時で、入場料として100臺灣ドルがかかります。

▲臺北當代芸術館では様々な現代アート作品が展示されています。(寫真・Mike Sung)

赤峰街

赤峰街にあるお店は訪れた人を魅了します。中山駅から徒歩1分の距離にあるこの小さな通りには地元の人だけでなく、韓國や日本など各國の観光客も訪れます。

▲赤峰街は文芸青年たちが集まる楽園です。(寫真・Mike Sung)

赤峰街はかつて「くず鉄の街」と呼ばれ、主に車の部品や金物などを売っていました。しかし、金屬スクラップの廃棄や自動車修理のお店は、レトロな寫真館や古着屋、獨立書店やカフェへと姿を替えました。古い建物は芸術性を添えて改裝され、赤峰街にレトロとモダンな雰囲気を與えています。ホットコーヒーや流行のファッション、美味しいデザートと一日を通して過ごすのに最適な場所です。

夜の中山

日が落ちた後の中山は晝間とはまた違い、街の雰囲気はシックで心地よいものへと変わり、さまざまな料理の香りが漂ってきます。臺北屈指のナイトスポットである中山で、活気と多様な文化が織りなす魅力的な體験をしましょう。

打鉄町49番地

臺北には日本式の居酒屋が數多くありますが、打鉄町49番地はおしゃれでありながらクールで気取らない雰囲気のお店です。料理も美味しく、特に大體的に宣伝している焼き鳥は絕品。オススメのお酒は日本酒ですが、キンキンに冷えたキリンビールも常備されています。

▲打鉄町49番地は日本の風情が感じられる居酒屋です。(寫真・Jeremy Kuahn)

23喜劇倶楽部

あまり知られていませんが、臺北の國際的なコメディシーンは大きな成長を見せており、その拠點となっているのが林森北路にある23喜劇倶楽部です。目立たない扉を開けて地下へ下りると、ステージ上のスタンダップコメディアンが英語と華語で観客を楽しませています。居心地の良いバーカウンターでは軽食やカクテル、23號啤酒のクラフトビールが楽しめます。英語のスタンダップコメディショー(オープンマイク)は毎周月曜日と水曜日の午後9時30分からで、金曜日には頻繁に有料のショーが開催されています。詳細はFacebookページを確認してください。

▲23喜劇倶楽部は臺灣初のバイリンガルなコメディークラブで、臺灣におけるスタンダップコメディーのパイオニアです。(寫真・23喜劇倶楽部)

吉星港式飲茶

24時間営業しているこのレストランは味わい深く、いつまでも変わらない憩いの場です。林森公園のすぐ南にある店舗に着いたら、2階に上がって席に座ります。人気スポットなので、スーツを着たビジネスマンや騒ぐのが好きな人たち、酔っ払ったコメディアン、疲れたタクシー運転手、好奇心旺盛な旅行客など様々な人たちが集まります。中山の文化や雰囲気、楽しいナイトライフを堪能したあとは溫かいお茶と熱々のエビで一息つきましょう。

▲吉星港式飲茶は年中無休で様々な業界の人を迎えてくれます。(寫真・Fifi Lee)

臺VLT

臺VLTはシンガポールのRVLTの臺北支店として大人気のワインバーです。中山の中心地からそれほど遠くはなく、Uberを使ってでも行く価値があります。臺VLTでは創造性に富んだ料理に、世界中から厳選した150種類以上のワインをペアリングすることで楽しい飲食體験を提供しています。グラス一杯だけでなく、ボトルで味わうことを推奨しているので、友人と一緒にワインを楽しみましょう。また、ナイトライフの人気スポットでもあるこのお店は、地元の人だけでなく観光客を多く利用します。國際的な場所なので突然歌い出す人がいても驚かないで下さい。

▲臺VLTでは贅沢なエキゾチック料理で新感覚の體験を提供しています。(寫真・臺VLT)

▲臺VLTでは贅沢なエキゾチック料理で新感覚の體験を提供しています。(寫真・臺VLT)

中山はこの他にも魅力的なスポットがまだまだあります。そこがこの街の最もクールなところです。日常的な街並みから何気ない場所で味わえる驚き、旅先で出會う人たち、この街の空気、芸術や音楽、すべてが貴重な體験です。中山は臺北市全體がそうであるように、伝統を守りながら未來に向けて変化を続けているので、今の中山を楽しんでおきましょう。